化粧品とパーソナルケア製品の研究のためのイムノアッセイ

化粧品やパーソナルケア製品の普及に伴い、これらの製品の安全性に関する研究が非常に重要になっています。イムノアッセイは、化粧品やパーソナルケア製品の研究において、炎症や刺激などのバイオマーカーを評価し、化粧品の潜在的な有害作用を調べるために使用できます。
皮膚環境
化粧品やパーソナルケア製品の研究において、皮膚環境は中心的なテーマです。皮膚は我々の体における最大の器官であり、機械的なバリア、体温調節、ビタミンD合成、ビタミンB葉酸保護、体液恒常性、感覚、自然免疫などのさまざまな機能があります。皮膚は、損傷を受けると修復機構を立ち上げ、皮膚細胞の増殖活性化を誘導します。そのため、角質層(stratum corneum、SC)の生化学的成分解析は、ヒトの皮膚における皮膚刺激、SCの完全性、構造および炎症性変化を評価するために使用できます。
イムノアッセイによる化粧品・パーソナルケア製品の研究
化粧品の毒性や化粧品の潜在的な有害作用に関する懸念の高まりから、"クリーン"な化粧品は化粧品研究の注目のトピックとなっています。バイオマーカーイムノアッセイは、化粧品やパーソナルケア製品の研究において、生体システムと潜在的な危険物質との相互作用を特性評価するのに役立ちます。イムノアッセイは、特に炎症、感作、老化、組織再生のマーカーを評価することにより、化粧品の生物学的な影響について直接モニタリングすることが可能です。
これらのイムノアッセイには次のものがあります。
- マルチプレックスイムノアッセイ
- 高感度イムノアッセイ
- ELISA
マルチプレックスイムノアッセイ
マルチプレックスイムノアッセイは、化粧品やパーソナルケア製品の研究において、複数のバイオマーカーを同時に解析するために使用されます。これには、皮膚、MMPやTIMP、老化、サイトカイン、ケモカイン、成長因子、ステロイド/甲状腺/下垂体ホルモン、免疫グロブリンのアイソタイピングに関連するアナライトが含まれます。
Luminex® xMAP®プラットフォームに基づく、高品質のMILLIPLEX®マルチプレックスアッセイは、時間とサンプル量を節約しながら、これらのバイオマーカーの解析が可能です。以下では、MILLIPLEX® パネルの具体的な研究アプリケーションについて説明します。

図1.MILLIPLEX® マルチプレックスバイオマーカー解析
ヒト皮膚バイオマーカー
MILLIPLEX® Human Skin Panelは、臨床観察よりも高感度で、SC構造の治療による微妙な変化を検出することができます。また、皮膚細胞抽出液や非侵襲性テープで採取した皮膚サンプル中のアナライト濃度を測定できます。このパネルでは、真皮とその下層の機能研究のためのバイオマーカーを同時に定量可能です。表 1 は、このパネルで解析できる皮膚抽出サンプルのサンプル調製法を示しています。
MMPとTIMP
マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)は、胚発生や組織の形態形成、組織や骨のリモデリング、創傷治癒、血管新生など、通常の生理的プロセスにおいて重要な役割を担っています。MMPの発現は、接着分子、成長因子、サイトカイン、ホルモンなどさまざまな刺激に応答して増加します。
MMP活性は、主に組織メタロプロテアーゼ阻害剤(TIMP)により制御されます。TIMPは、proMMPの活性化、細胞増殖促進、マトリックス結合、血管新生阻害、アポトーシス誘導など、他のいくつかの生化学的/生理学的/生物学的機能も有しています。
MILLIPLEX® MMP /TIMP Panelは、対象のアナライトを検出し、これら生理学的プロセスをモニタリングするのに役立ちます。
関連製品
老化バイオマーカー
MILLIPLEX® Human Aging Panel 1は、老化に関連する多面的なバイオマーカーを揃えています。これらの新規バイオマーカーをモニタリングすることで、研究者は老化を促進する基本的なメカニズムを理解し、最終的にはヒトの健康寿命を延ばすための臨床的介入の改善につなげることができます。
マウスはヒトと類似しているため、加齢・老化のモデルとして広く用いられています。老化に伴う生理学的変化とその病理学的帰結によって、高齢者はがん、心臓病、関節炎、骨粗鬆症、認知機能低下など多くの慢性疾患にかかりやすくなります。これらの疾患の多くはマウスでモデル化されています。長年にわたるモデル生物の集中的な研究により、老化は遅らせることができ、寿命は延ばすことができるという基礎的なエビデンスが得られています。これらの知見は、老化プロセスの基本的なメカニズムを解明することを目的とした老化研究に新時代をもたらしました。
MILLIPLEX® Mouse Aging Panel 1は、老化に関連するバイオマーカーを取り揃えています。これらのバイオマーカーをモニタリングすることで、研究者は複雑な生物学的プロセスを理解することができ、老化に関連する疾患を防ぐ新しい治療法につながる可能性があります。
サイトカイン・ケモカイン・成長因子
サイトカインは、免疫調節ポリペプチドで、適応免疫応答と自然免疫応答の両方で重要な役割を担っています。これらのタンパク質は、細胞間の直接的相互作用の仲介や、細胞外プロセスの制御も担います。成長因子は、ターゲット細胞の生存、増殖、分化を刺激し、血管新生、血管形成、細胞遊走、アポトーシス、創傷治癒、胚発生に影響を与えます。血管新生とは、新しい血管網を形成することであり、正常な成長・発達や創傷治癒において重要なプロセスです。
トランスフォーミング増殖因子β(TGFβ)は、サイトカインおよびシグナル伝達経路のスーパーファミリーで、免疫細胞の発生、血管新生、創傷治癒、胚発生、骨形成において機能します。
これらのサイトカイン、ケモカイン、成長因子のためのMILLIPLEX® パネルはすべて、研究に関連するシグナル伝達経路や免疫応答の理解を深めるために使用できます。
関連製品
ステロイド・甲状腺・下垂体ホルモン
ステロイドホルモンと甲状腺ホルモンは、エネルギーバランスの調節、精神と身体の発達、生殖器の発達、生殖、妊娠において重要な役割を担っています。MILLIPLEX® Multi-Species Hormone Panelによって、生殖サイクルおよび多くの疾患の病態生理におけるホルモンの生物学的機能を研究することが可能です。このアッセイは、内分泌かく乱化学物質の研究にも有用なツールです。
下垂体は、他の多くの内分泌腺を制御することから「マスター腺」と呼ばれ、代謝、成長および生殖の調節において重要な役割を果たすいくつかの主要なホルモンを分泌します。MILLIPLEX® Rat Pituitary Magnetic Bead Panelは、7種類のラット下垂体ホルモンを同時に定量することができます。
免疫グロブリンアイソタイピング
哺乳類にのみ存在する免疫グロブリンE(IgE)は、アレルギー反応に必須の役割を果たし、主に1型過敏症に関与しています。IgEは、主に肥満細胞や好塩基球に存在する受容体FcεRIと高い親和性で結合し、ダニ、ペットのフケ、花粉などの特定の抗原を認識するように細胞をプライミングします。一度プライミングされた細胞は、繰り返し同じ抗原にばく露されることにより、ヒスタミン、プロスタグランジン、ロイコトリエンなどの分子を放出し、「アレルギー反応」を引き起こします。MILLIPLEX® Human and Mouse IgE Singleplex Kitは、IgE レベルと起こりうるアレルギー反応をモニタリングすることが可能です。
必要なアッセイが見つからず、新しいアッセイの開発やアッセイのカスタマイズをご希望の場合は、カスタム開発サービスまでご連絡ください。
研究目的での使用に限定されます。診断目的では使用しないでください。
高感度イムノアッセイ
化粧品とパーソナルケア製品の研究者は、製品の安全性や有効性を示す指標として、炎症性サイトカインから皮膚特異的タンパク質まで多岐にわたるバイオマーカーを研究しています。高感度1分子カウント(Single Molecule Counting;SMC™) 技術は、製品による早期および低用量の副作用の研究を改善し、製品の有効性を評価するための炎症性バイオマーカーのダウンレギュレーションをより詳細にトラッキングすることができます。
高感度SMC™ 技術は、使いやすいシステムプラットフォーム、さまざまなサンプルタイプに対応する検証済みのアッセイキット、お客様のバイオマーカーのニーズに基づいたカスタムアッセイ/サンプル測定(CAST)サービスを通じて、タンパク質バイオマーカー研究のお手伝いをします。

図2SMCxPRO® プラットフォームの高感度1分子カウント(Single Molecule Counting; SMC™) 技術による解析
関連製品
研究目的での使用に限定されます。診断目的では使用しないでください。
ELISA(酵素免疫測定法)
ELISAは、化粧品研究において、免疫バイオマーカーを解析し、化粧品やパーソナルケア製品から起こりうる炎症プロセスを研究するために使用されます。化粧品の長期的な影響を調査し、新製品の研究開発を行うためには長期的な研究が必要です。そのような研究においては、ELISAのロット間の一貫性が非常に重要です。
CONFERMA® ELISAは、イムノアッセイにおけるロット間のばらつきに対処するために設計された製品群です。各アッセイには、自社開発のモノクローナル抗体(mAb)および組換えタンパク質キャリブレーター(スタンダードおよびクオリティーコントロール)のペアが使用されています。試薬は、製品の研究開発および有効期間を通して、ロット間の一貫性を確認するために、重要な物理化学的特性評価を行っています(表2)。
これらの技術を適用することで、個々の試薬のモニタリングやキャリブレーター原材料に対するバッチ間の関係性を確認することができます。完成したキットの各ロットは、サンプルQCライブラリーと各標準曲線の平行性の比較により、前バッチに対して評価されます。これらの試験により、アッセイ間変動が製品の発売時に設定されたパラメータの範囲内に収まっていることを確認します。
CONFERMA® ELISA は、長期的な研究の一環として、あるいは標準的な検査ツールとして、研究室でよく研究されているサイトカインを測定することができます。いずれの場合も、CONFERMA® ELISAにより、一貫した再現性のある性能が保証されます(図3)。

図3.同一オペレーターによる3ロットのIL-6 ELISAの標準曲線の平行性。ロット1(青線)はロット2(緑線)およびロット3(赤線)のリファレンス曲線として使用。ロット1をリファレンスとした場合、ロット2とロット3の傾き比は0.1未満となり、優れた類似性を示す。
関連製品
研究目的での使用に限定されます。診断目的では使用しないでください。
主な文献
化粧品やパーソナルケア製品の研究におけるイムノアッセイについてご覧ください。
MILLIPLEX® パネル
- Yegorov S, et al. Psoriasis Is Associated with Elevated Gut IL-1α and Intestinal Microbiome Alterations.Front Immunol. 2020.https://doi.org/10.3389/fimmu.2020.571319
- González-López MA, et al. Circulating levels of adiponectin, leptin, resistin and visfatin in nondiabetics patients with hidradenitis suppurativa.Arch Dermatol Res. 2020.https://doi.org/10.1007/s00403-019-02018-4
- Lee, JK, et al. Para-phenylenediamine, an oxidative hair dye ingredient, increases thymic stromal lymphopoietin and proinflammatory cytokines causing acute dermatitis.Toxicol Res. 2020.https://doi.org/10.1007/s43188-020-00041-6
- Fusco L, et al. Impact of the surface functionalization on nanodiamond biocompatibility: a comprehensive view on human blood immune cells.Carbon.2019.https://doi.org/10.1016/j.carbon.2020.01.003
- Westman M, et al. In Vivo Cosmetic Product Efficacy Testing by Analyzing Epidermal Proteins Extracted from Tape Strips.Cosmetics.2014.https://doi.org/10.3390/cosmetics1010029
- Kerr K, et al. Epidermal changes associated with symptomatic resolution of dandruff: biomarkers of scalp health.2010.https://doi.org/10.1111/j.1365-4632.2010.04629.x
SMC™キット
- Stober B, et al. Apremilast mechanism of efficacy in systemic-naive patients with moderate plaque psoriasis: Pharmacodynamic results from the UNVEIL study.J Dermatol Sci. 2019.https://doi.org/10.1016/j.jdermsci.2019.09.003
- Tomalin LE, et al. Early quantification of systemic inflammatory proteins predicts long-term treatment response to Tofacitinib and Etanercept.J Invest Dermatol.2019.https://doi.org/10.1016/j.jid.2019.09.023
- Gordon KB, et al. Guselkumab efficacy after withdrawal is associated with suppression of serum IL-23-regulated IL-17 and IL-22 in psoriasis: VOYAGE 2 study.J Invest Dermatol.2019.https://doi.org/10.1016/j.jid.2019.05.016
- Bruin G, et al. Secukinumab Treatment Does Not Alter the Pharmacokinetics of the Cytochrome P450 3A4 Substrate Midazolam in Patients with Moderate to Severe Psoriasis.Clin Pharmacol Ther.2019.https://doi.org/10.1002/cpt.1558
- Wen HC, et al. Serum from Asian patients with atopic dermatitis is characterized by T H 2/T H 22 activation, which is highly correlated with nonlesional skin.J Allergy Clin Immunol. 2018.https://doi.org/10.1016/j.jaci.2018.02.047
- Song T, et al. An integrated model of alopecia areata biomarkers highlights both TH1 and TH2 upregulation.J Allergy Clin Immunol. 2018.https://doi.org/10.1016/j.jaci.2018.06.029
- Ungar B, et al. An Integrated Model of Atopic Dermatitis Biomarkers Highlights the Systemic Nature of the Disease.J Invest Dermatol.2017.https://doi.org/10.1016/j.jid.2016.09.037
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