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ビール中の二酸化硫黄

Elimannの試薬による亜硫酸塩の光度測定

ビールとホップ

このアプリケーションノートには、ビール中の二酸化硫黄を迅速、効率的、かつ高信頼性で定量的に測定できる、Spectroquant®亜硫酸塩テストの使用方法が記述されています。

二酸化硫黄または亜硫酸塩は、ほとんどすべてのタイプのビールに含まれています。これは、酵母発酵の当然の結果としてビール中で発生しますが、ビールとその原料(ホップなど)を保存するための添加剤として使用される化学物質でもあります。1

遊離基捕捉剤に固有のその特性から、SO2の存在は酸化過程を防止するとともに、ビールの気の抜けたような風味の原因となる物質のカルボニル化合物の結合をトリガーします。しかし、SO2に敏感に反応して、悪心、嘔吐、頭痛などの症状を示す人もいます。1 そのため、一部の国ではビール中のSO2の最大許容濃度を指定して制限を設けています。例えばEUでは、委員会規制(EU)2011/1129により20 mg/L SO2の制限を超える二酸化硫黄の含有は認められません。2 濃度が10 mg/L SO2を超える場合には、「Contains sulfites(亜硫酸塩含有)」をラベルに示す必要があります。3 米国でも同様の義務的申告を適用しています。4

これらの制限への準拠を確認するための、さまざまな分析法があります。European Brewery Convention(EBC)は蒸留法による定量を推奨していますが、かなりの時間を要することから迅速な分析は困難です。5 ビール中の二酸化硫黄を測定するためのその他の方法に、いわゆるp‑ローザニリン法があり、EBCとAmerican Society of Brewing Chemists(ASBC)の両方がこれを推奨しています。この方法には、例えばp-ローザニリン、ホルムアルデヒド、塩化水銀といった有毒物質(一部は発がん性物質)を使用するという短所があります。6,7

測光DTNB法を用いたSpectroquant®亜硫酸塩テストは、上に挙げた方法に代わる迅速かつ高精度の代替手段を提供します。また、発がん性化学物質を一切使用しないという点も優れています。

亜硫酸塩試験方法

分析方法

サンプル調製

pHメーターを使用して、約20 mLの新鮮な冷却済みビール(4~8℃)のpHを水酸化ナトリウム溶液で6.5~7.5に調整します。この作業は、大気中の酸素によるSO2の酸化を避けるために迅速に行う必要があります。分析の前にサンプルを特定の温度にする必要はありません。不正確な結果を避けるために、MQuant®亜硫酸塩テストで亜硫酸塩含有量を確認してください。含有量が60.0 mg/L SO32-を超えるサンプルは、分析用水または蒸留水で希釈する必要があります。

測定

ゼロ点調整:

作業当日に、その都度システムのゼロ設定を行うようお勧めします。その際は、サンプルの測定に使用するものと同じ角型セル(幅10 mm)と、サンプルブランクを使用してください。システムのゼロ設定方法について詳しくは、装置のマニュアルを参照してください。

サンプルブランク:

サンプル自体の測定を実施する前に、サンプルブランクを測定する必要があります。このステップは、ビールに固有の色を補正するために必要です。8 mLの分析用水と、あらかじめpH 6.5~7.5に調整済みの2 mLのビールサンプルを混合することにより、サンプルブランクを調製します。混合液を角型セル(幅10 mm)へ移し、気泡を除去します。サンプルブランクの測定方法について詳しくは、装置のマニュアルを参照してください。

サンプルの測定:

Spectroquant®亜硫酸塩テストを使用し、テストキットに同梱されている添付文書の説明に従って二酸化硫黄濃度を測定します。添付文書に記載されている説明とは反応時間に違いがあり、ここでは10分とします。これより反応時間が短いと減量を招くおそれがあります。この10分が経過したら、測定溶液を該当する角型セル(幅10 mm)に入れて気泡を除去し、セルを測定コンパートメントに入れて、測定を開始します(該当する場合)。

測定が終了したら、装置のディスプレイから結果を読み取ります。データの管理と処理を容易にするために、Prove分光光度計で測定された結果をProve Connect to LIMSおよび/またはProve Connect to Dashboardにより変換します。測定溶液に濁りがある場合は、反応時間の経過後にシリンジフィルターユニット(製品番号は上記を参照)によって溶液をろ過する必要があります。ろ液の最初の数滴は廃棄してください。

結果

ASBC Beer-21A法に従って参照分析を実施することにより、結果を検証しました。1 さらに、Spectroquant®テストキットによる測定とASBC法による測定の両方について、スパイク試験を実施しました。そのために、3種類の異なる二酸化硫黄濃度(2、5、および10 mg/L SO2)でサンプルをスパイクしました。その後、回収量に基づいて回収率(RR)を計算しました。淡色ビールの結果を表1、暗色で濁りのあるビールの結果を表2に示します。

*ASCBによれば、最も近いmg/L値で結果を報告する必要がある。しかし、より正確な比較が行えるように、ここでは小数点以下1桁で結果を提示している。

まとめ

Spectroquant®テストキットによって得られた結果と、ASBCのp-ローザニリン法によって得られた結果は、十分に一致しました。Spectroquant®亜硫酸塩テストのASBC法からの偏差は、-1.2~1.0 mg/L SO2の範囲でした。全測定にわたる平均偏差は0.4 mg/L SO2であり、低い結果と見なせます。

さらに、テストキットの精度を評価するためにスパイク試験を実施しました。Spectroquant®テストで測定された淡色ビールでの回収率は90~103%の範囲でした。合計15例のスパイク試験のうち、誤差が10%を超えたのは2例のみでした。ASBC法で得られた結果はこれより明らかに劣り、ASBC法で測定された全淡色ビールでの回収率は83~110%の範囲でした。全体としては、6例のスパイク試験、言い換えると全サンプルの40%で誤差が10%を超えました。「Kölsch」ビールの2 mg/Lスパイクでは、回収率が67%にまで低下しました。

暗色で濁りのあるビールでは、低い回収率から分かるように、いずれの方法においてもマトリクス効果が認められました。これらのタイプのビールでSpectroquant®テストによって示された回収率は平均で77~93%であり、ASBC法では74~100%でした。

濁りのあるまたは暗色のビールタイプでは、二酸化硫黄の含有量が低過ぎると判定される可能性を排除するための手段として、標準添加の手順によりテストキットの適合性を事前に試験し(文署名「Identification of matrix effects by standard addition(標準添加によるマトリクス効果の特定)」を参照)、必要に応じて結果を補正因子で除する方法が推奨されます。

補正因子の計算法を以下に示します:

補正因子を計算します

注記:補正因子を使用できるのは、回収率がスパイク濃度範囲全体にわたって同程度の大きさの範囲に収まる場合だけです。

そうでない場合は、問題になっているビールサンプルの分析にテストキットは適しません。
 

結論

Spectroquant®亜硫酸塩テスト101746は、ビール中の二酸化硫黄を分析するための迅速で正確な方法です。検出される亜硫酸塩濃度は、ASBCが推奨するp-ローザニリン法で得られる濃度と同等です。淡色のビールタイプを使用して実施したスパイク試験により、Spectroquant®亜硫酸塩テストの精度はASBC法と比較して明らかに優れていることが示されました。暗色で濁りのあるビールの場合には、いずれの方法でもマトリクス効果が認められました。

まとめとして、Spectroquant®亜硫酸塩テストには、ASBC法と比較して以下のような長所があると言えます:

  • 淡色ビールでは高い精度、暗色で濁りのあるビールでは同等の精度が得られます。
  • 試薬をそのまま使用でき、また時間のかかる校正が不要のため、短時間で分析できます。
  • 発がん性化学物質の関与がないため、健康リスクのおそれが最小限に抑えられます。

参考文献

1.
Moussavian E, Vecsei A. 1995. Plaeocene reef sediments from the maiella carbonate platform, Italy. Facies. 32(1):213-221. https://doi.org/10.1007/bf02536870
2.
November 2011. TJ. 11(11): https://doi.org/10.32964/tj10.11
3.
POSITION (EU) No 7/2011 OF THE COUNCIL AT FIRST READING . [Internet].[updated 20 Feb 2011]. Available from: https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?uri=CELEX%3A52011AG0007
4.
Guido LF. 2016. Sulfites in beer: reviewing regulation, analysis and role. Sci. agric. (Piracicaba, Braz.). 73(2):189-197. https://doi.org/10.1590/0103-9016-2015-0290
5.
2005. Analytica-EBC. [Internet]. 9.25.1 - Total Sulphur Dioxide in Beer: Distillation Method: European Brewery Convention. Available from: https://brewup.eu/ebc-analytica/beer/total-sulphur-dioxide-in-beer-distillation-method/9.25.1
6.
1997. ANALYTICA EBC. [Internet]. 9.25.3 - Total Sulphur Dioxide in Beer: p-Rosaniline Method (IM): European Brewery Convention. Available from: https://brewup.eu/ebc-analytica/beer/total-sulphur-dioxide-in-beer-p-rosaniline-method-im/9.25.3
7.
Technical Committe A. Total Sulfur Dioxide. https://doi.org/10.1094/asbcmoa-beer-21
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