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組織への浸潤と転移 – Tissue Invasion and Metastasis

Hallmarks of Cancer : episode 10

細胞外小胞は、転移ニッチを切り開くことができるかもしれません。

転移は、腫瘍細胞およびそれらの微小環境における複数の変化が蓄積された結果であり、細胞が原発巣から離れた場所へ移動し、遠位の宿主組織へ定着することを可能にします。蔓延した血管新生は原発巣周辺部への栄養供給と、細胞の透過が容易な血管壁の供給を介して、転移を促進します。細胞外基質および血管壁の浸潤には、腫瘍細胞が細胞間接着を弱める(表面分子の発現を変化させ、上皮間葉移行(epithelial-mesenchymal transition:EMT)を模倣することによる)とともに細胞外マトリックス分解酵素を分泌することが必要です。

血管内の循環に耐え抜いた腫瘍細胞は転移部位の内皮細胞に接着し、浸出して、新しい宿主組織に定着します。遠隔部位への定着能には、腫瘍細胞の接着性と、遠位の微小環境に起こっている転移細胞到来に向けた前転移性の変化の双方が必要です。この“転移ニッチ”が決定されるメカニズムはまだ研究の途上であり、細胞外小胞(タンパク質およびノンコーディングRNAを運ぶ)を介する細胞間シグナル伝達およびエフリン-A1結合が関与しています。

Hallmarks of Cancer : episode 10

浸潤突起による組織浸潤機構
浸潤突起は、分泌された金属性マトリックス分解酵素(MMP)を介して細胞外マトリックスを分解する転移性腫瘍細胞によって形成される構造です。MMPの分泌は、細胞骨格タンパク質の浸潤突起への集積を促す機能も持っているTKS(Tyrosine kinase substrate)アダプタータンパク質に制御されていると考えられています。


最近の文献:

1.
Reticker-Flynn NE, Bhatia SN. 2015. Aberrant Glycosylation Promotes Lung Cancer Metastasis through Adhesion to Galectins in the Metastatic Niche. Cancer Discovery. 5(2):168-181. https://doi.org/10.1158/2159-8290.cd-13-0760
2.
Otto B, Koenig AM, Tolstonog GV, Jeschke A, Klaetschke K, Vashist YK, Wicklein D, Wagener C, Izbicki JR, Streichert T. Molecular Changes in Pre-Metastatic Lymph Nodes of Esophageal Cancer Patients. PLoS ONE. 9(7):e102552. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0102552
3.
Ieguchi K, Tomita T, Omori T, Komatsu A, Deguchi A, Masuda J, Duffy SL, Coulthard MG, Boyd A, Maru Y. 2014. ADAM12-cleaved ephrin-A1 contributes to lung metastasis. Oncogene. 33(17):2179-2190. https://doi.org/10.1038/onc.2013.180

実験に便利な豆知識

創傷治癒アッセイまたは“スクラッチ”アッセイは、細胞の遊走能を測定する簡単な方法であるように思われますが、再現性のあるスクラッチの作製は困難な場合があります。一度に複数のスクラッチを生成するには、Cell Comb™をご使用ください。この単純なツールは、遊走する細胞の生化学的分析をも可能にします。


この特徴に関連する新薬開発

TGFβ2の産生を遮断するアンチセンスオリゴヌクレオチド薬トラベデルセンは、膵臓および脳腫瘍の転移の治療に成功しています。


この特徴と関係の深いがん: 乳がん

Robert Weinberg、Joan Massaguéなどの研究室によって、腫瘍細胞が転移ニッチを決める機構にまつわる主要な発見には乳がん細胞が使用されました。幹細胞を含むがん細胞集団は、ストローマ細胞と協働し、時には原発巣が除かれたように見える場合にも転移ニッチを形成します。


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